2013-01-01から1年間の記事一覧

スタークア

「信用してるからお話をしますけど」 そして彼は(ああ……まさか本当に……)ビジネスのことを確固たる自信をもって語った。これでは俺が直前に吐いた「将来は老人に浄水器を売って生活するよ」という冗談がカンペキな皮肉になってしまったね。どうもこうもない…

平地

思い出せば「やるぞっ」というキッカケすらなく、本当に気づいたら始まっていた一人暮らしが4ヶ月ほど経つのに、ベッドや布団すら無かった倉庫のような部屋(寝袋を使っている)にようやくテーブルがやってきて、それまで段ボールを代わりに使っていたくらし…

ビューティフル、プリティー、ワンダフル

東京に東京を感じることがいよいよ鈍くなってきたのに、六本木の交差点は無神経に流れている。僕はエイリアン。法律に認められただけの異邦人。もうきっとこの街でわかり合えるのは外国人、それもダサいプリントシャツを着たような、とびっきりのナードしか…

パーラメント

「世の中には魅力的な女性が多すぎるよ」と言われて頷いた。しかしそのほとんどは自分に振り向かない、振り向く女だけがいい女だという哲学には渋い顔で返しても、相変わらずテレビのチャンネルはむかつくばかりで、蹴飛ばして壊した気持ちは以前とあんまり…

コンフォート・ホテル

俺が空を飛びたいと言うと、ユーレイの友だちがやってきて、言われるがまま俺は水の中へと身体を浸し、水と一体化する意識がどうの、それは恐怖ではないんだとまぶたを強く閉じ、プクプクと底へと沈んでいって、気づけば俺は溺死していた。 足で歩く煩わしさ…

ホワイトルーム

自意識セラピーがもたらした結果は回復なのか無関心なのか、とにかくただ繊細な感覚が鈍くなっただけだとしたら、死んだひとみで電車に乗って、気づけば精神病院に居る。ロビーで流れてるオルゴールサウンドによるビートルズも婦長に止められ(ヘイジュード…

ヴィシャス・デリシャス

例えば、招待された晩餐に出されたジビエ(と彼女は言っていた)の血液を口元から拭うことなく、見とれて遅れた最初の一口を「はやく」と彼女の視線が急かしている。俺がナイフを働かせたのちフォークを口へ運ぶと、クールとドライに振る舞う瞳は歪み、かす…

キック・ザ・ピクニック

高尚でもないし、軽口のスラングともニュアンスの違うそれは、傷心旅行やラブレターとしても浸りすぎる。余った切符でどこへ行こうか、それにしたってかつての先々、息を継ぐ先にて人間関係を壊して回っているようで、そうして覚えた身勝手なヒステリーが落…

死せる生

外を歩くのにネクタイとスーツが必要だった東京に比べれば、そういう意味でこの田舎は気が楽だ。煙を吐き続ける工場も無ければ、一日中金属の音がするわけでもない。けれどもこの田舎は生きていて、俺を忘れることもなく、巡回するパトカーと警察官を楽しま…