ヴィシャス・デリシャス

例えば、招待された晩餐に出されたジビエ(と彼女は言っていた)の血液を口元から拭うことなく、見とれて遅れた最初の一口を「はやく」と彼女の視線が急かしている。俺がナイフを働かせたのちフォークを口へ運ぶと、クールとドライに振る舞う瞳は歪み、かすかな無邪気を見せる。ワインすら無粋な陶酔。するりと抱かれ、彼女は俺の耳たぶを食いちぎり、飲み込んだ。ぴたりと染まった唇には、ジビエの血液が再び見える。

かつて電波塔のふもとで女性と焼き肉を食べました。おいしかったですと現地の人に話したら「地元の人はあんなとこで食べないよ。何の肉やねん(笑)」と言われたけれど、そんな都市伝説まがいなウワサを知りつつ「うまいわ〜」と食べていたとすれば、心の底から彼女はなんて素敵だったんだろうと思います。

他意ナシ。