ホワイトルーム

自意識セラピーがもたらした結果は回復なのか無関心なのか、とにかくただ繊細な感覚が鈍くなっただけだとしたら、死んだひとみで電車に乗って、気づけば精神病院に居る。ロビーで流れてるオルゴールサウンドによるビートルズも婦長に止められ(ヘイジュードを歌っていたら、後半のラララ部分で他の患者と合唱になっていたのがマズかったんだと思う)、翌日にはピチピチと小鳥がさえずるヒーリングサウンドに変えられてしまった。

ブザブザと読み上げられる症状はまるで罪状を述べられてるようである。そもそもそんなことを俺に言ってもしょうがないだろ(笑)と思うが、はい、はいと頷くうちにどうしてじんわり涙腺が緩んできて、うん、うん、と返す医者がポンと肩に手をやったとき、くだらないドラマに付き合わされてるみたいで一気に冷めた。レクリエーションルーム(なんてものがあるのだ)へ行き、レゴブロックで積み上げる俺の墨俣城をすごいすごいと褒められ、そこでもなんだか冷めてしまい、かといって癇癪を起こして壊すのももったいない気がして、婦長の持ってるインスタントカメラで四方からパチパチと撮影したのち、ひとつひとつブロックを崩していく。アニキさんと呼ばれている患者が「あーもったいない。もったいない」と言っていたが、無視した。