南風月のエッセイ その4

先日、口内のガーゼを交換する処置では本当に看護師の手を握らせてもらったぞ。言ってみるもんだ。ビニール手袋越しだったがな。
「次回は恋人繋ぎでお願いします」
しかし相変わらず処置は痛かった。思ったよりも症状は悪かったようで、退院予定日は想定していたよりも伸びてしまったが、食事が美味しいのでそれも悪くないと思ってしまう。入院手続きの際には「食事は要りません。売店で何か買って食べます」とツッパっていて、まあどちらにしてもそんな要求は通らないんだが、通らなくて正解だったな。大根のお味噌汁はかなり嬉しかった。

「明日様子見て、それが良かったら明後日退院しましょうか」
いよいよか。しかしいざ決まると寂しいものだな。
前回骨折で入院したときは、ほとんど自由が利かず、一日でも早く退院したかったが、今回は食事もそうだし、日中もテラスでコーヒーを飲んだり読書をして過ごしているから、職場には申し訳ないが軽い夏休みのようであった。
「寂しいですね」と言うと「はいはい」と相変わらずあしらわれてしまう。
部屋に帰ったら、まずは何をしたいかを考えているが、あまり浮かばない。しなければならないことはいくつかあるがね。