南風月のエッセイ その2

大学病院は盛況と言っていいものか、待合の椅子に収まらないほどの人数が溢れていた。
まあ大抵の場合、病院ではしばらく待つことになるのはわかっている。職場へ連絡を取るなどして待っていると、1時間ほどで名前が呼ばれて通された。

「入院です」
やはり、と思ってはいたが「入院ですか……」と返すと、放っておけば窒息死することが往々にしてある、むしろこの症状で入院と判断しない耳鼻科医はいないですよと、どちらにしてももう頭痛に怯えて眠るのもしんどいのでやむ無しといったところだった。

そうした説明のあと処置が始まり、まず膿を出すために口の中を切りますと言われ、そのために麻酔を塗ります、あまり効きませんがと聞き「なにい」と思ったが、もう何を言っても仕方がない。
いよいよ口の中へ刃物が入り、結果的に言うと麻酔は本当に効かなかった。大腿骨を折ったときの処置の痛みに比べればこんなもの何でもないとは思うが、そういうものではないな。痛いものは痛い。気分が悪くなって項垂れていると「あとちょっとですからね」と言われて、おいおいまだあるのかよと思う。グロッキーなうえに口が利けないので冗談を言うこともできない。余裕があれば「看護師さんの手を握っていてもいいですか」と言うことができればよかったんだが。