南風月のエッセイ

「ひどい咽頭浮腫です」
そう診断されたのは月曜の朝だった。
身に覚えがないのだが、前日の夕方に突然喉の違和感が出て、夜には唾を飲み込むのも痛みが伴うようになり、それでほとんど眠ることができなかった。
すがる思いで行った病院で薬を処方され、それを飲むことで気分はかなり良くなった。痛みもだいぶ軽くなり、その夜は行きつけのラーメン屋に行ってお腹いっぱい食べた。
女将に「こういう病気にかかりまして」と言うと「えーっ、本当かよ」と言って
「何かあったら、電話してこいよ。力になってやるから」と番号をくださった。
「本当はこういうときに来てくれる女の子がいたら一番いいんだろうけどな。まあ今はいないんだろうけど」と女将は笑うのだった。

連日処方された薬を飲み、それに伴う頭痛が現れたら痛み止めを飲む、というサイクルを続けたが、飲食は相変わらず多少の痛みを覚悟しながらだったし、夜中に痛み止めが切れて目を覚ますこともあって、薬の時間配分をしながら飲まなければならないのがかなりストレスだった。

これはおかしいと思ったのは3日目で、痛み止めの効果が切れるのも早くなり、口内の腫れもひどくなって『か行』が発音できなくなるなど、ほとんどマトモにしゃべることもできなくなっていた。
通院予定だった金曜日に病院へ行き症状を伝えると、先生はやや困惑した表情をしたのち、大学病院への紹介状を書きますと言って、僕はそのままそこへ行くことになった。