血液

夜が明けていた。
かつてネイヴィー・シールズが「人が働き始める時間に俺たちは帰る。最高の仕事だ」と言っていたが、この瞬間はそうだな。
夜中に働く人間がどこかおかしくなっている様を何度か見てきて、少しばかりの同調を覚えるのは、薄目でグループラインの新着を確認して削除する、とか、とにかくゲレゲレなものを避けている神経質さがすでに狂った人間のするそれだとしたら?
汚れた靴とズボンを履いてる間は社会から相手にされることはない。デパートやモールの裏側で働いているとき……まあ孤独な気持ちになるよ。オレは。

「いつでもラインして」という手に返せば未読のまま数日も置いたりする。まあそれでもありがとう。プラマイゼロ。今でも何が楽しくなかったのかって反省したり、見ないうちに知り合いが結婚してたりする。それにアイドルを追いかけてた頃より生活費が回っていない気がするのは不思議だ。
上記の時間に雑なラインをあちこちに送った。そうしたもう何年ぶりかという知り合いから返事がきて、つい先月からアメリカで暮らすことになったと聞いてとても驚いた。

スターバックスで働けば?」と美容師に言われる。
「その、聞こえが悪い仕事をしてるよりはさ」
「失礼だな」
「そりゃその歳で『スタバでバイトしてる』って言われたらゲッてなるけどさ、『スタバで店長やってる』って言ったらオッてなるんじゃない??そのへん目指してみたら??それに出会いが多そうだし。入社したら私に割引券ちょうだい」

軽く酔ったときにでもラブい気持ちになって、その矛先がない人間はどうしているのか、先日初めてガールズバーに行ったらそこにはロマンチックさはなかったけれど、次の日彼女らが駅前でティッシュ配りの営業をしているのをたまたま見て、愛おしい気持ちになった。のが度し難いなと思う。