オープンマインド

バイクを借りて海沿いを走る。1日150バーツ。
「おっぱい当たってますよ」
男二人で乗っている。
日本料理店に行き、日本人のマスターにうまくバンコクへ帰る手段を訊く。
「何でも訊いてよ」
寝台列車、あるいは来たときと同じく船とバスで12時間。彼はハッピーだった。『売っている場所』、そしてこの島におけるルールを細かく教えてくれた。俺は注文したカフェラテをじっと飲みながら、本棚に並ぶ、そいつや思想にまつわる書籍の背表紙を眺めていた。
「サンセットを眺めながらみんなで吸うと最高に気持ちがいいよ」
同行者が話に頷く。
「あとこれはみんなに薦めてるんだけど」
と言って彼は同行者のメモ帳に書き込んだ。
YouTubeでこのタイトルを検索してみてほしい。陰謀系の映画なんだ。原発を停止させないのも企業複合体がアメリカとヨーロッパの政府と繋がっていて……」
俺はトイレの場所を訊ねて立った。
席に戻ると、机に置かれた『独立国家のつくりかた』に目を落とす。
「若い君たちにはぜひこの映画と本を見てほしい」
隣のテーブルに、この島に住んで12年になるという男が座った。彼は「一日4時間しか働かないことにしてるんだ」と言った。

店を出て、再びバイクを走らせる。
「明日、みんなでそのサンセットが見える場所に行って楽しみましょうよ」
「考えとくよ」
カフェインのせいか、ひどく憂鬱な心地で疲れてしまい、同時に様々な想いを振り返させる。
バンガローに戻ると、ほろ酔いの仲間たちが夜のビーチに出かけていく。
「行かないんですか?」
「今日はやめとくよ」
見送って、テラスの椅子に腰を掛けると、向かいの部屋のイスラエル人がやってきて、俺の隣に座ればつたないリスニングのコミュニケーションが始まる。だからあんたはきっと気まずくて、やっぱりここに来るべきじゃなかったと思っている。