いい加減な人びと

目的のワットプラケーオには着いたが寺院を見る余裕はなく、近くにあるという『バックパッカーの聖地』カオサン通りを目指すことにした。

屋台がひしめく、やかましくてごちゃごちゃした道を抜けて行く。途中10バーツで唐揚げを串に刺したようなものを買ってつまむ。ピリ辛なタレがかかっていて美味しい。場所もよくわかってないカオサン通りを目指して闇雲に歩く。本当にそこらじゅう屋台だらけである。フルーツや串焼き、仏像やよくわからないものまで色んなものが売っている。

どれだけ歩いたか闇雲に探すのにも疲れ、物は試しもあって三輪バイクのタクシー、トゥクトゥクを拾うことにした。
料金は先のタクシーの明朗会計とは違って交渉しなければならない。それが面倒で億劫だ。旅行エッセイやガイドブックによると「ボラれる」などと書いてあり、それが余計と憂鬱にさせるが、意を決して話しかける。
「カオサンロード、20バーツオッケー?」
「ノー、50バーツ」
「は?wwwノーノー、20バーツ」
「話にならん」といった感じで運転手はソッポを向いた。そもそも適当な価格がよくわからない。
今度は別の運転手に30バーツで交渉すると、「え?カオサン通りならあっちだよ」なんて手を示して教えてくれた。なんと。
「サンキュー」

そうしてトゥクトゥクの運転手が指した方へ向かって歩く。相変わらず屋台ばかりの光景が続いている。
泊まるところも決めなければならない。ザックが重くて面する背中も熱いので、いい加減どこかで下ろして休憩をしたい。
看板に地図が載っており、「Kao San Road」の文字が見える。近くだ。マクドナルドを横切って裏路地へ入ると、いくつかゲストハウスが確認できた。ここら辺を拠点にしようか、値踏みしながら歩くと、店先にいた男と目が合った。
「こんにちは〜」
日本人だ!一気に安堵感に包まれる。
「泊まるところを探してるんです。ここ、どうですか?」
「キレイだしオススメだよ〜。良かったら部屋を見せてもらったら?」
トロンとした口調の彼に言われるまま、宿の人に鍵を借りて部屋を見ると、ベッドがひとつと壁に付けられた扇風機だけ。『ゲストハウス』といえば林間学校の相部屋をさらに悪くしたようなものを想像してたので、個室なだけでも充分に上等である。
「オッケー」
と宿の人に伝えると、取り敢えず一晩分の180バーツを支払った。
部屋にどかっとザックを置いて、ベッドに寝転がる。ようやく落ち着き、旅を楽しめそうな余裕が出てきた。