喘声ダイヤモンド

そういうワケで、意を決して二枚目の彼に「実はお前の推しメンを好きになってしまった」というメールを送った。すると「直接会って話がしたい」という返事がきて、俺は彼の待つ夜の公園に向かったのだ。

到着すると、彼は既に居た。
「よう」なんて挨拶をするのもどうかと思ったが、気まずすぎて他に何を言えばいいのかわからなかった。そのトンチンカンな挨拶をしてからはお互いジイッと無言で、先に口を開いたのは彼の方だった。
「……殴ってくださいよ」
「……えっ?」
「僕を殴ってくださいよ。殴ってみなみを奪い取ってくださいよ。それともできないんですか。あんどうさんのみなみに対する気持ちはそんなもんなんですか!!」
それを聞いて、小さな声で「えっ……」と言った俺は自分を恥じた。それから、それを払拭するように大きく息を吐いた。
「わかった。歯食い縛れよ」
そう言って俺はそこにあった角材で思いっきり彼を殴ると、それきり……

パターンB

「ごうおー!!」
拳を握り、思いきり頬を殴った。彼はその暴力になすがまま身を委ね、どたっと土の上に倒れた。
俺がいくつか荒い息を吐いてから、再びシンと沈黙が訪れた。そして再び彼から口を開くのだった。
「……効きましたよ」
俺は思い出したように、またいくつか荒い息を吐いた。彼はやれやれと立ち上がり、血と涙を袖で拭った。
「……みなみを幸せにしなかったら、許しませんからね」
そう言われ、俺はふと我に返り「俺たち何やってるんだろう……」と思った。そして、ドッととてつもないほどのバカバカしさが溢れてくるのであった。