かつては

さっきまで店内にいたアニオタ君とメンヘラちゃんの痴話喧嘩が往来でなんだなんだと始まって、それをしばらく見ていて思うところが……まあどうでも、誠実さや不誠実さ、それぞれがそれなりに持ったり堂々としたりしているね。
遡ればフラリと寄ったそこで
「明日でこのバーは無くなるんですよ」
と言われ「そうなんですか!」と返すもショックは受けていない。その場で連絡先を交換した10も上のガールには繋がらず、追及がために出向いた翌日の今日にすれ違いの去り際「あ、そう?」なんて言われて(オトナな)ジョークだったと知る。笑うよ。

閉店当日の喧騒ではこの町の新入り。もう残るものも残っていない通夜会場で、ウイスキーならなんでもなんておざなりな注文におざなりな酒をもらう。
「あと、水も」
飲み干したのちに賑わいから去り、牛丼屋を通り過ぎ、お気に入りのバーに行く。そこではジャズが流れていて、静かな……なんて笑っちゃうけど。
あらゆる幼稚さと下品さを避けたつもりが実際はどうだったかね?なんて別にあの店が潰れることがぼくの節目になったわけでもない。いつか本当に誰かを愛したことが?失望されるのはいつも自分の方だったのに、まさかこちらから「勝手にしろ」などと言うとは思わなかった。誰がどうだどうした、自分の正解不正解のアレコレも昨日まで、こんなにも冷静になれるものか、ガールもウィメンズもだいたいこんな感じなのかしら。
そんなやさぐれた心地へ、忘れていた自分へのメッセージをくれた友人に心から感謝する。